Engineering a sea change in ocean wave energy harvesting
Vicorの高効率電源で実現する新しい洋上波力発電
高効率で電力供給ができ遠隔地との高速通信機能を備えたことで、新たな海洋アプリケーションを切り開く、C-Power社の自律型洋上電源システム
※ 本リリースは、2021年7月27日(米国東部)に発表されました。
Vicor Corporation(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:Patrizio Vinciarelli、NASDAQ上場:VICR、以下:Vicor)は、波力発電システムを開発しているコロンビア・パワー・テクノロジー社(本社:米国オレゴン州、以下:C-Power)と協業したことを発表しました。
海洋の波のエネルギーを利用する技術は目覚ましい発展を続けています。信頼性とコストパフォーマンスに優れた発電および蓄電のために改良が重ねられており、新しい形の海洋データ通信サービスも期待されます。
コロンビア・パワー・テクノロジー社(C-Power 社)は、米国オレゴン州をコーバリスを拠点に世界中で事業を展開する波力発電システムのリーディングカンパニーです。信頼性とコストパフォーマンスに優れた技術で、発電と蓄電、データ通信サービスを提供し、海洋経済の活性化の一翼を担っています。C-Powerの自律型洋上電源システム(AOPS)は、波の機械的エネルギーを電力に変換し、海洋石油や天然ガスの探査や生産、海洋の二酸化炭素隔離(二酸化炭素固定化)や海洋学研究、水産養殖、防衛などの海洋アプリケーションに幅広く役立っています。
海洋エネルギー発電でキロワット級の電力を
C-Powerは、2005年の設立以来、海洋エネルギー発電の技術力を高めるとともに、急速に普及するこの分野に力を注いできました。他社が巨大なメガワットシステムを追い求める中、C-Powerは海洋のデータ通信網に焦点を絞り、遠隔のキロワット規模の電力供給に専念してきました。初期は波力発電ブイシステム(WEBS)というDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)のプロジェクトの一環でした。
C-PowerはWEBSプロジェクトを進める過程で、水中探査機や海中で使用する機器、外洋で環境データの収集に用いるセンサーなどに必要な電力を、その場で作り出すという考えに新たなビジネスチャンスを見出しました。それまでは、高価で取り扱いの手間がかかるバッテリーを組込むか、船やディーゼル発電機から海底ケーブルで電力を供給していました。AOPSの開発により、環境へ配慮しながら通信回線として使える、自律型の洋上電源が実現し、C-Powerは想像を超えた新しい用途を開拓することができました。
電力効率を向上しデータ通信能力を強化するSeaRAY
C-Powerは海洋の波から10W~1MWの発電を行う電源システムの製造を短期的な目標に掲げていますが、最新のAOPSプラットフォームであるSeaRAYが、ここで重要な役割を果たします。この目標のうち、小電力のシステムを実現するために、C-PowerはVicorの電力変換技術を用いて、パワーウェイトレシオが高い電源システムを設計しました。小型なので運びやすく商用利用に有利で、納入と設置も容易なため、日々の運用コストを数万ドル単位で削減することができます。
C-PowerのシニアR&Dエレクトリカルエンジニアであるジョー・プルーデル氏は、次のように述べています。「パルス状の波のエネルギーを半安定化したDCバス電圧に変換する際に、制御・調整が可能な入力電圧範囲の広いDC-DCコンバータがどうしても必要でした。これは極めて困難なことなのです。Vicorの電源モジュールを用いることで、さまざまな電力範囲のエネルギー変換が可能になったのは非常に大きなメリットです。」
海からクラウドに情報を送ることで、遠隔地での自律型のデータ通信を可能にするSeaRAYのイメージ。セルラーネットワークや衛星通信を利用してクラウドとSeaRAYとの間でリアルタイムにデータをやり取りすることで、これまでより多くのデータを収集し、頻繁に送信することが可能になりました。
また、SeaRayは海中で起きていることをリアルタイムでクラウドに送信することで、自律型の遠隔データ通信を実現します。これまでの海洋データ収集システムは、収集できるデータの量や送信頻度に制限がありました。セルラーネットワークや衛星通信を利用し、クラウドとSeaRAYの間でリアルタイムのデータ通信をすることで、これまでより多くのデータを頻繁にやり取りすることが可能になります。
絶えず変化するエネルギー源から電力を得る
C-Powerの電源設計における主な課題は、複雑な波のエネルギーの特性を、SeaRAYの厳しい電源要件に適応させることでした。これには、予測不可能な海洋の波の性質に対応するため、30:1という極めて広い入力電圧範囲が必要でした。Vicorの電源システム設計により、高効率でエネルギーを変換して蓄電するシステムが実現しました。このユニットは外部から制御信号を受信して、必要に応じた正確な電力変換動作をリアルタイムで行なうことができます。
C-PowerのCEOリンスト・リースマン氏は次のように述べています。「非常に厄介な特性をもつエネルギーをコスト効率の高い実用的なソリューションに変換し、その電力を可動あるいは固定の様々な機器に利用できるよう調整する技術は、最先端そのものです。これを成功させたという話は他では聞いたことがありません。」
SeaRayの電源はスケーラブルな設計です。Vicorの電圧変換比固定バスコンバータ BCM® とレギュレータモジュールPRM™を複雑な多段式のディスクリートコンバータと組み合わせて、予測不可能な変化をする波のエネルギーを効率よく変換し、安定した電力を提供します。これによりSeaRAYの変換効率は50%から85~94%に向上しました。
SeaRAY は、Vicor の電圧変換比固定変換バスコンバータのBCM® とレギュレータモジュールPRM™を複雑な多段式のディスクリートコンバータと組み合わせて、波のエネルギーを効率よく変換し、安定した電力を提供する。これによりSeaRAYの変換効率は50%から90%以上に向上した。
安定して動作し入力電圧範囲が広いVicorのDC-DCコンバータを使うことで、C-Powerは切望していた制御ができるようになりました。SeaRAYによって、パルス状の波エネルギーを様々なDCバス電圧に変換し、様々な電力の電流を供給できるようになったからです。さらに、Vicorのモジュールに採用されている電力変換技術はノイズの発生が少ないので、センサーの測定精度を低下させるようなSeaRAYないの電磁干渉やノイズを最小限にすることができます。
「波のエネルギーを捉えて電力に変換しようとする企業はたくさんありますが、小さくコンパクトな形状でそれを成し遂げ、運用や物流の観点から顧客のニーズを満たすことができるかどうかはまた別の話です。私たちはVicorの協力を得たことで、この点において他の企業を遥かに引き離して先陣を切ることができました」とリースマン氏は述べました。
C-Power社の自律型洋上電源システムについて、詳しくはこちらをご参照ください。
『海洋のアプリケーションに給電する波力発電』
Vicor Corporationについて
Vicorは、高性能モジュール型電源コンポーネントの設計、製造、販売を行う米国(本社:マサチューセッツ州アンドーバー)の電源専業メーカーです。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、オートモーティブ、通信ネットワーク、産業機器、ロボティクス、鉄道、航空防衛アプリケーションなどへ向けて、広く事業を展開しています。
日本法人のVicor株式会社(Vicor KK)は2017年に設立され、電源コンポーネントの販売・技術サポートを行っています。詳しくは、www.vicorpower.com/ja-jp をご参照ください。
Vicor、BCM®は、Vicor Corporationの登録商標です。PRM™ は、Vicor corporationの商標です。
C-Power社について
コロンビア・パワー・テクノロジー社は、電力供給の全くない海を、電力と情報に溢れる環境に変えるために海洋経済に欠かせない製品を提供しています。波力発電システムのリーディングカンパニーであるC-Power社は、持続可能で信頼性とコストパフォーマンスに優れた発電と蓄電のソリューションを開発しています。世界中のどこへでも簡単に輸送、展開することができ、海洋エネルギー、防衛・安全保障、水産養殖、科学・研究、通信などの重要な産業において幅広く活躍しています。バージニア州シャーロッツビルに拠点を置き、製品開発部門をオレゴン州コーバリスにもち、150年以上にもわたるマネジメント・運営、エンジニアリングの実績を誇ります。詳しくはcpower.co. をご覧ください。