Vicor、ハイブリッドシステムを導入した世界初のツーリングカー選手権で、新しいインテリジェントバッテリパックが採用されたDelta Motorsport社と協業
Vicor、ハイブリッドシステムを導入した世界初のツーリングカー選手権で、新しいインテリジェントバッテリパックが採用されたDelta Motorsport社と協業
電力密度が高く優れた機能のバッテリを採用することで、オルタネータの廃止と、軽量化、信頼性の向上を実現
Vicor Corporation(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:Patrizio Vinciarelli、NASDAQ上場:VICR、以下:Vicor)は、英国・シルバーサーキットを拠点におくDelta Motorsport Ltd(本社:英国、以下:Delta Motorport社)と協業したことを発表しました。
イギリスツーリングカー選手権(BTCC)は、1958年から続く伝統のある有名なカーレースで、技術の粋を集めた30台以上の車両により争われます。2022年、同選手権は新たな規定を追加し、高性能なマイルドハイブリッド車両が競い合う、世界初のメジャーツーリングカー選手権として開催される予定です。
BTCCの規定には、ドライバーは電気モータを戦術的に活用することで、車のパフォーマンスや加速能力を高めることができると記されています。Cosworth Electronics 社はこのシステムの供給権を得て、Delta Motorsport社へ専門性の高い技術開発を委託しました。Delta Motorsport社は、電子回路の専門知識と、多くの分野の技術を持っており、新しいバッテリパックと関連する電子回路を設計して、この「戦術的パワーアップ」を実現します。
リチウムイオンベースの新しい48Vバッテリパックには、革新的なインテリジェント電力管理機能、高電力密度のDC-DCコンバータ、制御システムが搭載されており、バッテリパックからインバータ/モータシステムへ電力を供給するとともに、システム側からの回生電力を回収します。そして、高電力密度のコンバータにより、車両のすべての電子回路やデバイスへ給電します。高い高電力密度と高度な電力管理機能をバッテリに組み込んだことで、オルタネータが不要になり、軽量化に加えて、性能と信頼性の向上が実現しました。
48Vの直流電力源と電源モジュールを組合わせた電力供給ネットワーク (PDN)により、小型、軽量、高性能のシステムが実現しました。並列接続された4つのDC-DCコンバータにこの48Vが供給され、最大92A(約1.2 kW)の安定化された13.8Vを出力します。4つのコンバータで負荷を分担しますが、N+1冗長(航空機レベル)の構成とすることで、3つのコンバータでも対応可能です。
ハイブリッドシステムの3相ブラシレスモータは、双方向のインバータを介して、バッテリと接続されます。このインバータにより、バッテリからの電力がモータに供給されるだけでなく、モータからの回生電力がバッテリに戻されます。
ピットレーン上の最初の速度制限走行中は、モータをピュアEVモード(モータのみ、ICEなし)で駆動し、レース中は必要なパフォーマンスに応じてマイルドハイブリッドモード(ICEとの併用)で駆動します。
革新的なインテリジェントバッテリパックとその制御
新しいバッテリパックは、全セルの電圧を制御するバッテリ管理システムを搭載しており、インバータ/モータコントローラと通信しながら常に最大電力の充放電を実現します。バッテリ管理システムは、バッテリの充電状態(SoC)に基づき絶えず給電または受電ん可能な電流を計算します。低SoC時には電力供給を減らし、高SoC時には電力回生を制限します。
システムは全セルの温度をリアルタイムでモニターしており、得られたデータを使用可能な電力の計算に反映します。また、トラブル発生時にはコンタクタを開放して、バッテリパックを安全に遮断することもできます。
Delta Motorsport 社が設計した電力供給ネットワークでは、並列接続された4つのDC-DCコンバータに48Vが供給され、最大92A(約1.2 kW)の安定化された13.8Vを出力します。4つのコンバータで負荷を分担しますが、N+1冗長(航空機レベル)の構成とすることで、3つのコンバータで対応することができます。
バッテリ管理システムはデータのロギングと診断の機能があり、DC-DCコンバータのパフォーマンスを記録することができます。これにより、全車両の異常ステータスをチェックできるだけでなく、正確な供給電流のデータが得られます。
Vicor DC-DC コンバータ電源モジュール
DC-DCコンバータのシステムは、ChiP型パッケージの電源モジュールであるVicorの DCM3623 絶縁型DC‑DCコンバータを4つ搭載しており、バッテリパックから、最大92Aの、安定化された13.8Vの電圧を供給します。電源モジュールは小型・薄型であり、バッテリセル間に設けられる微細な穴をあけた冷却プレートに直接熱結合させて組み込むことができます。
Delta Motorsport 社の設計によるVicorの電力供給ネットワーク
このことは、できるだけ多くの体積を、パワーエレクトロニクスの「オーバーヘッド」にではなく、有効なバッテリセルに充てることが不可欠であったため、非常に大きな利点でした。DCMモジュールはスケーラビリティに優れ並列接続が容易なので、モジュールで構成する電源アーキテクチャが可能になり、PDNをカスタマイズすることで、Delta Motorsport社は、電力を減らすことなく小型化の要求に応えることができました。
Vicor の電源モジュールはバッテリパックの初期テストで優れた性能を発揮し、定格出力を下げる必要性はなく、電圧が低下することもありませんでした。将来の電気自動車は、パワーエレクトロニクス部品を小型・軽量化、高効率化して、厳しい性能の要求にこたえ続ける必要があります。電力需要の増大に応えるべく、車メーカーは48Vバッテリに移行しつつあります。Vicorのモジュール型のアプローチを用いれば、小型かつ軽量なケーブルとコネクタにより、電力供給ネットワークの効率向上、および電力損失と重量の低減が実現します。
Delta Motorsport 社は、バックアップ用電源にもVicorの電源モジュールを採用しています。バッテリパックの電子回路は、60W出力で小型のPI3105絶縁型DC-DCコンバータにより給電されるため、安全システムは車両の電源から切り離されても稼働をつづけます。また、バッテリパックの電子回路が車両と別に給電されるため、システムチェックのためのリモート接続が可能になります。
イギリスツーリングカー選手権に向けて… ハイブリッドエンジンで走りましょう!
Delta Motorsport’社の革新的なバッテリパック について詳しくはこちらをご参照ください。
Vicor Corporationについて
Vicorは、高性能モジュール型電源コンポーネントの設計、製造、販売を行う米国(本社:マサチューセッツ州アンドーバー)の電源専業メーカーです。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、オートモーティブ、通信ネットワーク、産業機器、ロボティクス、鉄道、航空防衛アプリケーションなどへ向けて、広く事業を展開しています。
日本法人のVicor株式会社(Vicor KK)は2017年に設立され、電源コンポーネントの販売・技術サポートを行っています。詳しくは、www.vicorpower.com/ja-jp をご参照ください。
Vicor、DCM™、ChiP™はVicor Corporationの登録商標です。
Delta Motorsport 社について
革新的かつ創造的なエンジニアリング企業であるDelta Motorsport 社は、英国で高度成長を遂げるテクノロジークラスターの中心に位置する、世界的に有名なシルバーストーンサーキットを本拠地としています。
同社の開発の3つの柱はバッテリシステムと触媒を用いた発電、およびプラットフォームのマスター制御です。いずれも、重責がかかるモータスポーツ業界の、何十年もの経験の中で磨かれた、「堅牢にして軽量」のアプローチで進められています。
この3つの柱に付随するのが、自動車エンジニアリングと組み立ての能力です。同社はこの能力を活かして、スタートアップ向けにもOEM向けにも、多くの完成車を提供しています。
同社のチームは様々な分野に秀でており、多くの企業を支援しています。その優れた手腕で、初期のコンセプト策定から少量生産まで、幅広いサービスに対応しています。